ていねいのレシピ

上品で繊細な日本の美 アートな涼感和菓子

見るだけで楽しくなるデザイン、食べるとうれしくなる食感。
今だけの特別な和菓子で、夏を味わい尽くしましょう。

◆暑くても食べやすい夏の和菓子

季節感を大切にする和菓子の世界には、夏しか出会えない特別な逸品がいくつも存在します。

たとえば、水まんじゅうや水羊羹、葛切り、わらびもち。ツルツルの食感と冷たさが食欲をそそります。水や氷のような透明感あふれるビジュアルも、とてもさわやかです。

夏の和菓子は、味も夏仕様に仕立てられています。たとえばこし餡は、より細かい網でこして冬よりも滑らかに仕上げたり、塩の量を増やしたりして、さっぱりとした口当たりを演出しています。青梅、あんず、甘夏など、夏の果物を使って酸味を加えることもあれば、発汗作用のある葛や、防腐作用のある笹を使うのも、夏ならではの工夫。夏の和菓子には、目も口も喜ぶ涼味が揃っているのです。


◆夏ならではの装い

芸術的で美しい夏の和菓子。食べる前にぜひていねいに鑑賞してみてください。

生菓子の代表格、練り切り。朝顔やうちわ、スイカなど、夏をイメージさせるものを模したデザインもあれば、七夕や清流、夏の空など、抽象的に夏を表現するものもあり、華やかで繊細な色使いと美しい造形は感動的です。

夏の和菓子の代表格といえば、錦玉羹(きんぎょくかん)。琥珀糖(こはくとう)や琥珀羹(こはくかん)
とも呼ばれます。透明感のある寒天で、あんや練り切りで作った金魚やあゆや、果物を包んだ見た目は、水の中を切り取ったようで涼やか。シャリシャリとした表面と、ぷるんと水分を蓄えた中の食感のコントラストも楽しいです。

干菓子である和三盆にも、夏の装いを感じられます。和三盆とは徳島県、香川県の一部で作られる砂糖のことで、お盆の上で3度練るていねいな作業から、こう呼ばれるようになりました。この和三盆糖だけを型に詰めたのが、干菓子の和三盆です。夏の和三盆は「食べる工芸品」とも呼ばれ、淡い色合いと浮き彫りのような細かな作りに目を奪われます。口の中でホロリと溶ける食感も絶妙。


◆職人の技に魅了

こうした涼感あふれる和菓子を生み出すのには、職人の熟練の技術が必要です。たとえば練り切りの美しいグラデーションを生み出す、「ぼかし」の技法。色の違う生地を内側から押し込んで表面をぼかしていく「内ぼかし」や、表面に違う生地を貼り付ける「外ぼかし」を巧みに使って、微妙な色合いを表現しています。

木型を使った造形も、和の文化らしい技法。練り切りや和三盆を木型に詰めて、周りを叩いてから外します。美しいフォルムを生み出す菓子木型ですが、現在では職人も減り、全国に数人しかいないとか。

貴重でていねいな和菓子職人の技に想いを馳せながら味わうのも、ぜいたくな時間ですね。


◆和菓子に合わせたい飲み物

和菓子を美味しくいただくために、飲み物も欠かせません。もったりとした食感や、口に残る甘さが特徴の和菓子には、やはり苦味が効いた日本茶が好相性です。

いつもは煎茶派の人も、和菓子に合わせて抹茶にしてみては。茶筅や茶碗で泡立てずにマグカップでいただく抹茶も、まろやかで美味しいものです。溶けやすいタイプの抹茶ならお手軽に楽しめますね。

日本国内で作られた“和紅茶”も和菓子と相性抜群。日本で育った茶葉はタンニンが少なく、マイルドな味わいです。渋みが薄く、ほのかな甘みがあるので、ミルクや砂糖なしで和菓子に合わせるのがおすすめ。紅茶の香りが、和菓子の甘みをふんわりと包み込みます。

目で感動し、舌で堪能する夏の和菓子。ぜひご贔屓の和菓子屋さんで心躍る逸品を見つけてみてください。