ていねいのレシピ

涼を感じる夏の音色 風鈴のある暮らし

風に乗ってどこからともなく届く、涼やかな音色。
風鈴のある暮らしで、ひとときの涼を感じてみませんか。

◆風鈴の癒し効果

風鈴と聞いてどんな音を思い浮かべますか。チリンチリンという軽やかな音色を連想する人もいれば、リーンという高い澄んだ音を思い出す人もいるでしょう。前者はガラス製、後者は金属製の音色。高音で硬質な響きが涼しさを感じさせます。

風に揺られて音を鳴らす風鈴。その音色を聞くたびに風が吹いているさまが想像できます。これも涼しさを感じさせる理由です。不規則で自然なリズムによるナチュラルな揺らぎが脳波をα波に導き、気持ちを癒してくれるのです。


◆現代ならではの風鈴の楽しみ方

現代の住宅事情では軒先がなかったり、エアコンで窓を締め切っていたりして、風鈴を楽しむ環境にない場合が多いかもしれません。そこで「風鈴=軒につるす」「外からの音を楽しむ」という固定観念を取り払ってみてはいかがでしょう。

たとえば室内の冷房や扇風機の風が当たる場所に風鈴を飾り、風向きモードをスイングにすれば、ランダムに奏でられる風鈴の音色を楽しめます。玄関やドアに吊るせば、開け閉めのたびに軽やかな音が響きます。最近では卓上型の風鈴も登場しています。音はもちろん、趣あるインテリアとしても夏の風物詩を楽しめます。


◆風鈴の歴史と種類

風鈴の起源は約2000年前の中国。竹林に青銅の鐘をぶら下げて、風の吹く方向や音の強弱で占いをした「占風鐸」が風鈴の原型といわれています。これが魔除として日本に伝わりました。

その後、風鈴は長い時間を経て、夏を楽しむアイテムとして全国各地で作られるようになりました。代表的なのが300年の歴史をもつ伝統工芸、江戸風鈴です。型を使用せず、棒の先につけたガラスを吹いて膨らませる「宙吹き」という技法で一つひとつていねいに作られたビードロ風鈴は、世界に一つだけの形。絵柄が内側に描かれているので劣化せず、鮮やかな絵柄を長く楽しめます。

一方、岩手県の南部風鈴は鉄製の風鈴として有名です。伝統工芸である南部鉄器を使って作られ、「リーン」という澄んだ高い音は、環境省が選定した「残したい日本の音百選」にも選ばれています。金属製の風鈴では、富山県の高岡風鈴も独特の美しさがあります。真鍮性のシャープなフォルムは、まるでモダンアートのよう。澄み切った音にも心が研ぎ澄まされます。

産地やブランドにもこだわって、長く使えるお気に入りの風鈴を見つけてみませんか。


◆荘厳な風鈴寺に出かけてみよう

おうちで楽しむ風鈴も素敵ですが、たくさんの風鈴が飾られた場所へ出かけるのも夏らしい過ごし方です。

たとえば愛知県豊田市にある増幅寺。山あいの小さなお寺には、道元禅師の教え『風鈴の頌』に基づいて、7000個を超える風鈴が奉納されており、別名“風鈴寺”と呼ばれています。穏やかな景色の中で聞く無数の音に、どこか深遠な響きが感じられるかもしれません。

福岡県田川市の心願山三井寺も、風鈴の名所として有名です。こちらも小さなお寺ですが、2000個近い風鈴が吊るされたトンネルが設けられ、キラキラと軽やかな音が降り注ぐ中を散策できます。

玄関先で、部屋の中で、そして風情ある寺で、風鈴の音色に耳を澄まして、夏を味わい尽くすのも良いですね。